チャネル戦略は、新規事業の立案や販売戦略の検討、クライアントの業界分析などを行う上で、重要な戦略の1つとなります。

今回はそんなチャネル戦略の具体的な種類、役割や重要性、具体的な構築ステップや活用事例などを解説していきます。

チャネル戦略(流通戦略)とは?

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チャネル戦略”(Channel Strategy)とは、企業が製品やサービスを最終顧客に届けるための方法、プロセス、および経路を総合的に計画、設計、管理する戦略的アプローチのことです。

この概念は、製造業から小売、そしてコンサルティング業界まで幅広く適用されています。

マーケティング戦略の中で、理想的な顧客の購買行動を得るために、マーケティングフレームワークやツールを組み合わせることであるマーケティングミックスの中でも、有名な4Pの中でも、「チャネル戦略(流通戦略)」は、placeに関する部分の内容となります。

要素説明
プロダクト(product)製品やサービスが対象とする市場を特定し、その市場内での消費者の属性(年齢、性別、職業、地域など)、ニーズ、痛み点を詳細に理解することが重要です。
販売チャネル(place)顧客に製品やサービスを届けるための具体的な経路です。オフライン(例:小売店、代理店)とオンライン(例:e-commerce、ソーシャルメディア)の両方が考慮されるべきです。
価格設定(price)製品の価値をどのように顧客に知覚させるか、そしてそれが如何に顧客の購入意欲に影響を与えるかを考慮する要素です。
プロモーション手法(promotion)製品やサービスを市場に紹介し、顧客の注意を引く活動です。これには広告、セールスプロモーション、公関活動などが含まれます。
4p分析
4P分析
引用:いよいよ大詰め!4Pはどこから考える?

チャネル戦略の種類とは?

チャネル戦略の成功には、目的に合わせた適切な種類の戦略を選ぶことが重要です。

以下は、一般的に用いられるチャネル戦略の主要な種類です。

チャネル戦略の種類主要な特徴適用されるケース備考
直接販売(Direct Selling)企業が製品を直接顧客に販売自社ブランドが強く、顧客と直接関わりたい場合オンラインストア、自社店舗が該当
間接販売(Indirect Selling)販売代理店や小売業者を介して販売広い地域や多様な顧客層に販売する場合代理店、卸売業者が該当
マルチチャネル戦略直接販売と間接販売を組み合わせるマーケットの多様性を活かしたい場合
オムニチャネル戦略オフラインとオンラインが一貫して連携高度な顧客体験を提供したい場合一貫した体験が必要
ウィットレス戦略大量に卸売業者や小売業者に販売大量流通が必要な場合価格設定に制限があることが多い
フランチャイズ戦略ビジネスモデルやブランドをフランチャイズ提供ブランドが強く、事業拡大を望む場合
ドロップシッピング在庫を持たず、供給元に発注して販売初期コストを抑えたい場合
デジタルファースト戦略デジタルチャネル(オンラインなど)を優先テクノロジーを活用し、効率的な展開を望む場合

各戦略には一長一短があり、企業の目的、ターゲット市場、製品の性質などによって最適な戦略が異なります。

したがって、これらの戦略を理解し、状況に応じて適切に選ぶ能力が、成功するチャネル戦略を構築する鍵です。

チャネル戦略の役割と重要性とは?

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チャネル戦略(Channel Strategy)の役割や重要性は、以下のようにまとめられます。

  • 顧客へのアクセス強化
  • 市場カバレッジの拡大
  • 価格戦略の最適化
  • ブランドイメージの構築
  • コスト削減と効率化
  • 競争優位性の獲得
  • 顧客満足度とロイヤルティの向上

顧客へのアクセス強化

チャネル戦略の最も基本的な役割は、企業と顧客との間の「架け橋」を形成することです。

適切な販売チャネルを通じて製品やサービスを提供することで、顧客は容易にそれらにアクセスできます。

市場カバレッジの拡大

様々なチャネルを活用することで、企業は異なる市場セグメントや地理的領域に製品やサービスを展開できます。

これにより、市場カバレッジが拡大し、売上が増加する可能性が高まります。

価格戦略の最適化

販売チャネルによっては、価格設定の自由度が異なる場合があります。

これをうまく活用することで、企業は異なる顧客層に対して、より効果的な価格戦略を採ることが可能です。

ブランドイメージの構築

販売チャネルが顧客に与える印象も、その企業やブランドに対する認知に影響を与えます。

例えば、高級感のある店舗での販売や、使いやすいオンラインプラットフォームを提供することで、ポジティブなブランドイメージを構築できます。

コスト削減と効率化

効率的なチャネル戦略により、運用コストを削減し、ROI(投資対効果)を向上させることが可能です。

適切なチャネルを選定し、無駄な経費を削減することで、全体のビジネス運営が効率化されます。

競争優位性の獲得

巧妙に設計されたチャネル戦略によって、企業は競合から一歩先に進むことが可能です。

特定のチャネルで高い効果を出すことができれば、そのチャネルを独占または優位に運用することで、市場での競争力が高まります。

顧客満足度とロイヤルティの向上

顧客が求める価値を理解し、そのニーズに最適な形で製品やサービスを提供することができれば、顧客満足度は高まります。

これが長期的な顧客ロイヤルティにつながることも多いです。

以上のように、チャネル戦略はビジネス成功において多面的な役割を果たします。

市場への適切なアクセスから価格戦略、ブランディング、そして顧客満足度向上に至るまで、多くの要素に影響を与える重要な戦略と言えるでしょう。

チャネル戦略の構築ステップ

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チャネル戦略を構築する過程には複数のステップが含まれますが、その中で特に重要なのが「チャネルの幅」と「チャネルの長さ」です。

これらの要素を考慮に入れつつ、具体的なステップを以下に説明します。

  • 市場調査とターゲット市場の特定
  • 製品・サービスのポジショニング
  • 具体的な目標設定
  • チャネル選定と幅
  • 価格設定とチャネルの長さ
  • プロモーション戦略とチャネルの幅
  • 戦略の実施と評価
  • 戦略の改善と最適化

市場調査とターゲット市場の特定

市場の動向や顧客行動を深く理解し、その情報に基づいてチャネルの幅と長さを考慮します。

製品・サービスのポジショニング

チャネルの長さ(直接販売から間接販売までの過程)と幅(使用する販売チャネルの多様性)に適した製品やサービスのポジショニングを確立します。

具体的な目標設定

売上、顧客獲得数、ROIなど、明確なKPIを設定することで、チャネルの効率性と効果性を測定します。

チャネル選定と幅

オンライン、オフライン、直接販売、間接販売など、チャネルの幅を広げるか、特定のチャネルに集中するかを決定します。

価格設定とチャネルの長さ

チャネルの長さに応じて、製品の価格を設定します。直接販売の場合、価格は低く設定される傾向があります。

プロモーション戦略とチャネルの幅

選定したチャネルの幅に応じて、広告、SNSマーケティング、イベントなどのプロモーション手法を決定します。

戦略の実施と評価

計画した戦略を実行し、KPIに基づきそのパフォーマンスを評価します。

この段階でチャネルの幅と長さを再評価することも重要です。

戦略の改善と最適化

結果の分析と評価を元に、チャネルの幅や長さに関する戦略を微調整や改善します。

「チャネルの幅」と「チャネルの長さ」を意識しながらこれらのステップを踏むことで、より戦略的なアプローチでチャネル戦略を構築できます。

それぞれの企業や事業に応じて、これらのステップは柔軟に調整可能です。

チャネル戦略設計時の注意点

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チャネル戦略を設計する際には、以下のような点に注意を払うことが有益です。

  1. ターゲット市場の理解
  2. 費用対効果およびブランディング
  3. チームとの連携

1.ターゲット市場の理解

ターゲット市場の選定が曖昧だと、効果的なチャネル戦略は困難です。市場調査を行い、明確なターゲット市場を設定することが基本です。

市場環境や消費者行動は変動するため、柔軟に戦略を調整できるようにし、また、拡大した際にも適用可能な戦略(スケーラビリティ)を考えることが重要です。

競合が使用しているチャネルと同じものを使う場合、なぜそれが有効であるのかを理解し、差別化の点を明確にすることが重要です。

2.費用対効果およびブランディング

投資資対効果(ROI)を最大化しながらコストを最小限に抑えるバランスを見つけることが重要です。どれだけ多くのチャネル(幅)を使用し、それぞれのチャネルでどの程度深く関与するか(長さ)も慎重に考慮する必要があります。

また いくつかの異なるチャネルを活用する場合でも、メッセージやブランドイメージは一貫していなければなりません。

3.チームとの連携

チャネル戦略はマーケティング部門だけの仕事ではありません。販売、製品開発、カスタマーサービスなど、関連する全ての部門と連携することが必要です。

全社としてどのような施策をとっているか常に連携していくことで、よりチャネル戦略が、有意義な戦略になっていくと思います。

これらの点に注意を払いながらチャネル戦略を設計することで、より成功確率の高い戦略を構築できるでしょう。

チャネル戦略の事例

  1. 資生堂
  2. りそな銀行

1.資生堂:オムニチャネル戦略とパーソナライズ

資生堂は、オムニチャネル戦略を駆使して、消費者に対するエンゲージメントを高めています。オンラインとオフライン、両方の販売チャネルで一貫した顧客体験を提供することを目的としています。

特に、AIとデータ解析を活用したパーソナライズが注目されています。

例えば、オンラインでの購買履歴や顧客のスキンケアのニーズに基づいて、パーソナライズされた製品やサービスをオフラインの店舗でも提供しています。

2.りそな銀行:地域密着型チャネル戦略

りそな銀行は、特に地域密着型のチャネル戦略を強化しています。

オフラインの店舗は地域社会と密接に連携し、地域に根ざしたサービスを提供しています。

また、オンラインバンキングやモバイルアプリを通じて、より便利なサービスを提供する一方で、オフラインの店舗でのコンサルティングサービスも充実しています。

このように、多様な顧客ニーズに対応するために、オフラインとオンラインのチャネルを効果的に組み合わせています。

以上の事例から、成功するチャネル戦略は、明確なターゲット市場と顧客ニーズの理解、そしてそれらに適した多様なチャネルの効果的な組み合わせに依存することがわかります。

チャネル戦略のまとめ

チャネル戦略は、新規事業の立案や販売戦略の検討、クライアントの業界分析などを行う上で、重要な戦略の1つとなります。

そのため、どこのチャネルでどのように戦うかが企業にとって非常に重要となってきます。

この記事がチャネル戦略を考える際の参考になったら嬉しいです。

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コンサルアサイン編集部

コンサルアサイン編集部。メンバーは、デロイトトーマツコンサルティングや、ブティックファームなどの出身者など多数。株式会社ビジコンが運営しており、コンサルの求人や案件、専門用語などを発信しています。